「君のためにできること」


〜プロローグ〜



ある山奥の湖の畔に、1人のサーナイトが座っています
♀でしょうか?

凄く切ない、哀しい眼をしています
私は彼女の心が、サーナイトではないですが、読めてしまいそうです

がさがさっと、彼女の後ろから、もう1人のサーナイトが現れました
彼は、カゴいっぱいに木の実を持っています
彼が来ると、あの哀しそうな顔をしていたサーナイトも
軽くにこっと微笑んで、彼と2人で奥の山小屋へ向かいました

その時の彼女の笑顔は、作り笑顔ではありませんでした


あ・・・ここは・・・

聞いたことがあります
昔・・・昔と言えど、何十年も前というわけではないですが・・・
この辺りに、「サーナイト研究基地」があった、という事を
研究基地では、トレーナーから、選ばれた運命の「サーナイト」を
連れてこられていた、そんな、ある大雨の日に、サーナイト達が脱走して

そんな聞いた話があります
あれ?誰から聞いたのでしょう?
さっきまでそんなこと知らなかった気がしますが・・・
・・・・・・
何か、頭に新たな情報が入ってくるのを感じます
誰・・・?

誰なの・・・?



お話の続きは私がお教えします・・・・

聞きたいのであるならば、君が今まで見ていた私の所
あの山小屋までいらっしゃい

あの湖畔のサーナイト、だと思いました

言われたとおり、私は山小屋に入る
中には椅子と机と・・・荷物が少々、といった所か
サーナイトは1人しかいない
もぉ1人は・・・?とたずねる、彼は一人になりたいと言って、山の上へ行った
と。
私の心、読まれちゃったのかしら
まだまだねぇといった感じで、ふふっと笑う

どうして、私に話をしてくれるのだ?と問う

特に深い意味はないらしい・・・


いや、これ以上は(やはりサーナイトじゃないから・・・)読めないが
何かある、大切な何かがある・・・

それは、この話を聞いてからでも遅くはないだろう
と。
そう思うことにした





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〜出会い〜


私はビコ
ある、優しい「マスター」のトレーナーとしてのサーナイトでした

あの日、私は「サーナイト研究基地」と名乗る研究調査員に捕まりました
悪い事をしたから捕まったわけでもなく

マスターは、すぐに来てくれると信じていましたが
マスターの記憶には、私との記憶を消されてしまい
・・・マスターは、助けには来てくれません
マスター・・・・・・


研究基地・・・
あたかも、怪しい基地
私はこれから、どんなことをされなきゃいけないのか?
どんな孤独を感じなければいけないのか?
頭の中には、不安が募るばかり


案の定、人気のない山奥に研究基地はありました
たとえマスターが来てくれないと、分かっても・・・
誰も来る気配すらない山奥・・・

こんなところで、これから、死ぬまで暮らさなければいけないの?

絶望

この言葉が合うでしょう


私一人では、逃げることも出来ないだろう・・・


私一人には、間違いがありました


私を含めて5人のサーナイト・・・


彼らがいなければ、ホント私の人生はそこまでだったでしょう
そんな、人生を変えてくれた、変えてもらったわけじゃないですが
そんな存在でした

3日もすれば、彼らとはもう友達、友達以上でした

5人の中で、一番のまとめ役のような存在がポケット
彼はいつもクールで、多くを語らないが、どんな事も知っていて
誰よりも頭が切れる
彼のマスターは何でも、本を読ませてくれたのだとか

私の妹みたいなパステル
私のことを「ビコたん、ビコたん!」って呼んでくれる、かわいい女の子
進化したてのようで、まだまだ、キルリアっぽさが抜けていない
笑うだけ笑い、泣くだけ泣く・・・分かりやすい娘でした

そのパステルの兄みたいなプレイス
実際兄ではないが・・・彼女が笑ってるときは共感して
悲しんでいる時は慰めてあげる、そんな彼
天気に敏感で、自称「天気予報士」

そして、私の相談相手、ムードメーカー的なタキオン
彼との会話には、なにかすごく落ち着く
とても、心が和む
どんなことも嫌がらず、素直な人
ちょっとしたイタズラ好きだけど、憎めない、
彼は、私に
ここから逃げられても、ずっと一緒にいられると、いいな
と。

そんな、彼らのおかげで、私の悲しみもかなり和らぎました


〜脱走計画〜

この研究基地で、結局、なにもされずに1週間が過ぎました


こっそりと脱走計画をたてていました
つかまったら・・・何をされるか分からない
しかし、このままここにいても、同じこと・・・
雨の日を選びました
やはり、雨が降るとそれだけでも、少しは慌てるでしょう

次の雨の日を、脱走日に決めました
プレイス曰く、雨の日は3日後だそうで



次の日、外は晴れていました
南の風が吹いているようで、プレイスも
自信がある様子です

しかし、今日はいつもと違うことがありました

朝、パステルとタキオンが連れ出されました
彼らは、そう嫌がる様子もなく、連れて行かれました

タキオンからのテレパシー・・・

明後日からは、自由なんだし・・・ここでイザコザしてもしょうがないよね☆
と。


彼らは夕方ごろ帰ってきました
ひどく疲れてるようです

タキオンは私の部屋の壁に寄りかかって座り
今日の事をいろいろと教えてくれました

あっ、ちなみに部屋は、ばらばらなんですが
壁1つとなりとか、向いとかで、声のない話は出来ました
みんなの様子も分かります

なにかいろいろなことを頭に叩き込まれたようで
結局はあまり覚えてないそうです

タキオン・パステルが安心で何よりでした



脱走前日
雲行きが怪しくなり、昼過ぎには小雨が降るようになりました
プレイスの頭がぼさぼさしてきました
なんでも、湿度が上がると、ぼさつくようです
しかし、今日のプレイスにはやや不安の顔が見られます

どうした、明日なんだから緊張するのは分かるけど・・・
とポケット。
パステルも、いつもと逆の立場で
プレイス、大丈夫?
と、気にしているようです


明日は・・・今更言うのもって、さっき分かったんだけど
記録的な大雨になりそうだ。ちょっとやそっとの雨じゃないだろう
その辺り、覚悟して置いてください
と。


〜最後の夜〜


最後の夜、私とタキオンの2人は外の雨を見つつ
壁越しに話をしました
隣との間には、高い所に1つ柵の部分があるが
高すぎてあまり使いません
ましてや、話しながらあの高さでは、身体が持ちません

壁越しでも伝わってくる彼の心の温かさが
私の感情を高めてきます
恋という感情なのでしょうか


タキオンのマスターはどんな人だったのです?

俺のマスター?そりゃもう、優しくて可愛くて
俺のことも、すごく可愛がってくれたなぁ・・・
そうだなぁ〜まるでビコみたいで

な、何言ってるんですかぁ(///)

はははっ、半分ホントで半分ウソ

冗談やめてくださいよぉ(照)

へへっ・・・う〜ん、そろそろ今夜は寝ようか



タキオンの言った後、私が

必ず、・・・必ず、大丈夫ですよね・・・
一緒に逃げましょうね・・・お願いですよ☆
と。


ビコ・・・無事に逃げられたら、一緒に・・・一緒に、な☆


タ、タキオン・・・えぇ、ずっと一緒に・・・どんな時も、って、お願いしていいです?


どんな時も、か・・・いいね(^^ )~♪・・・


あ、あれ?私何いってるんだろ(照)


ははっ(^^;)
明日は早いから、じゃぁ、オヤスミ

お・・・おやすみなさい




この声、

タキオンとの会話

この時は、分からない・・・分かるはずがない

この約束・・・・・・

未来予知は攻撃だけ・・・ホントの未来予知はできなかった




ビコさん、まだ寝てないの?
と。
不意に向かいから
プレイス

ううん、もう寝ますよ。起こしちゃってゴメンなさい
と、答えた

ビコさん・・・
明日の為の・・・ビコさんに、って事で受け取ってください
これは、あなたが万が一の時、役に立つと思われる物をつめておきましたから
明日、私が個人的にみんなに渡しますが・・・とりあえず、一足先に
・・・・・・
ただ、できれば、使いたくないです
無事にみんなが逃げ切れることを祈りますから・・・
そのためのお守りとして・・・私からビコさんへって事で!!
ビコさんの為にできることを、私はしましたから☆
では、おやすみなさい・・・明日は早いですからね

1つのモンスターボールを渡してくれた


ありがとう、プレイス。ゴメンね、私何も返せなくて・・・
と。

そう思うのなら、再び会える時までとっておいて欲しいです
あと、パステルを・・・パステルを見守ってやってください
彼女、ホントまだ幼いから・・・


ふにゃぁ〜?幼い??


びくっとして、パステルの方を見た


危険なボタンは・・・押さない・・・・わかったってばぁ〜


・・・・

寝言を言ってるみたいです
ほっ、と息をつくプレイス


それでは、おやすみなさい・・・


おやすみなさい



雨がいっそう強くなってきた

ほんとに明日は大変な1日になる
嫌な予感も、いい予感も・・・何も分からない